派遣看護師として働く際には正規雇用とは異なる形態となるため、保険関係はどうなるのだろうと、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
事実、働くのであればやはり社会保険などの保障制度は最低限欲しいところです。
社会保険をもし全額自己負担で支払いをするとなると、予想外に高い金額を請求されることもあります。
しかしきちんと加入していれば、雇用先が保険料の支払いを半額負担してくれますので、費用の負担も抑えることができます。
今回は派遣看護師で働くなら知っておきたい、社会保険のメリットや加入条件について解説していきたいと思います。
派遣看護師も社会保険による保障を受けることができる!
派遣看護師であっても社会保険に加入することはできます。そのため派遣看護師になったら、社会保険による保障を受けることができないというわけではありません。
とはいえ社会保険には加入条件があり、派遣の期間によっては入れない場合もあります。
社会保険の加入条件をしっかりと把握しておこう
派遣看護師の社会保険は主に健康保険・厚生年金保険・雇用保険が挙げられます。
これらの保険は派遣の期間によって加入できる条件が異なります。
正規雇用の職員であれば意識する必要はあまりありませんが、派遣看護師での雇用形態で社会保険に加入したいのであれば、きちんと加入できる条件を把握しておく必要があります。
それではそれぞれの加入条件について詳しく見ていきましょう。
雇用保険の加入条件
- 1つの派遣会社と31日以上の雇用契約が見込まれている場合
- 1週間の労働時間が20時間以上である場合
短期・長期の派遣でも失業給付金を受け取ることができる
上記の要項を満たしていれば雇用保険に加入することができます。たとえば契約期間が2ヶ月以上の案件であれば、短期・長期の派遣看護師も雇用保険の対象となります。
また一年以上同じ勤務先で働いていた派遣看護師である場合は、他の職業と同様に失業給付金を受け取ることが可能です。
ただし派遣期間を満了しての申請である場合、自己都合による退職と同じ扱いとなりますので、実際に給付金を受け取れるのは離職票を届けてから、7日と三ヶ月後となってしまう点には注意が必要です。
単発の派遣看護師も雇用保険に入れる場合がある
2ヶ月以上の案件であれば、短期・長期の派遣も雇用保険の対象となると述べましたが、それでは単発の仕事をしている派遣看護師は対象外となるのか、というとそうではありません。
単発派遣の場合は同じ派遣会社と31日以上契約し、尚且つ1週間に20時間以上働いているのであれば、1日おきに派遣先が変わるとしても、雇用保険への加入を継続することができます。
単発で31日以上契約していなくても保険に加入できるケース
また単発派遣で同じ派遣会社と31日以上契約していない場合でも、例外的に雇用保険に加入できる場合があります。
- 1週間の勤務時間が20時間以上となる場合
- 複数の派遣会社と契約した合計日数が31日以上となる場合
単発でも加入は可能だが前提となる条件を満たす必要がある
まず1についてですが単発で働いている派遣看護師の場合、派遣先が変わるごとに会社との雇用契約が切れてしまいますが、それでも週20時間以上働いているという条件を満たしていれば、雇用保険への加入が可能になる可能性があります。
そして2についてはたとえ異なる派遣会社で働いていても、合算して勤務日数が31日以上となるのであれば、保険の加入対象になります。
ただし31日以上ですから1日も空けずに勤務していること、そして前もってハローワークに申請して、日雇い手帳の発行を済ませておく必要があります。
厚生年金と健康保険の加入条件
- 派遣会社と契約した雇用期間が2ヶ月以上である場合
- 1週間の労働時間と1ヶ月の労働日数が正社員の約3/4以上である場合
長期ならば問題なく適用できるが短期の場合は注意
派遣看護師の場合、厚生年金と健康保険は派遣会社との契約が2ヶ月以上であり、週4日以上の勤務であれば加入条件を満たすことができます。
ただしパートなどの時短勤務ではなく、フルタイム勤務であることが前提となります。
契約期間1年などの長期派遣ならばさほど問題はありませんが、短期派遣の場合は2ヶ月未満の案件もありますので注意が必要です。
派遣期間がちょうど2ヶ月で終わる場合は保険適用外となる
たとえば短期の案件で派遣期間が2ヶ月で満了となる場合、派遣会社と結んだ雇用期間は2ヶ月未満とみなされるため、社会保険の対象外となってしまいます。
ただし2ヶ月間の契約であっても、その後1ヶ月の延長が前提となっているなら保険の適用は可能です。
しかし保険に入ることができるのは、延長で生じた月からで、前々月と前月は適用外となっています。
派遣看護師も知っておきたい社会保険の加入メリット
このように派遣看護師の方も社会保険に加入することができるのですが、加入することでどんなメリットがあるかも知っておきましょう。
広義には社会保険にもいろいろありますが、ここでは最もポピュラーな健康保険と厚生年金保険のメリットについて解説していきます。
健康保険加入時のメリット
- 派遣看護師(被保険者)が負担する保険料が半額になる
- 病気などで働けなくなっても生活保障を受けることができる
- 扶養制度により保険料の費用負担を軽減することができる
派遣看護師(被保険者)が負担する保険料が半額になる
健康保険に加入した場合は雇用契約を結んだ派遣会社が、健康保険料の半額を負担してくれます。
そのため派遣看護師が支払う保険料も半額となります。国民健康保険では雇用元が費用負担を請け負うことは無いので、保険料はすべて派遣看護師が支払うことになります。
病気などで働けなくなっても生活保障を受けることができる
派遣看護師が病気や怪我で働けなくなり、収入を得ることができなくなっても、健康保険に加入している場合は傷病手当金が支給されます。
また出産で長期の休みが必要となった場合は、出産手当金による生活保障が適用されます。
扶養制度により保険料の費用負担を軽減することができる
健康保険には扶養制度があり、被扶養者の年収が130万円未満であるなら、保険料の支払いが免除された上で、健康保険に加入することができます。
そのため被扶養者がいる世帯の費用負担を軽減することが可能です。国民健康保険では扶養制度がありません。
よって被扶養者の収入が130万円未満であっても保険料が発生するため、家族全員分の支払いが発生しその分負担も大きくなります。
厚生年金保険加入時のメリット
- 国民年金のみの加入者よりも将来支給される年金が増える
- 障害年金や遺族基礎年金の対象が国民年金よりも広い
- 扶養制度により保険料の費用負担を軽減することができる
国民年金のみの加入者よりも将来支給される年金が増える
厚生年金保険に加入している場合、老齢厚生年金に老齢基礎年金が上乗せされます。
そのため結果的に国民年金のみ加入している場合よりも、将来支給される年金が増えるというわけです。
障害年金や遺族基礎年金の対象が国民年金よりも広い
また被保険者が障害等級1級~3級に該当する場合、一時金の支給が適用されます。国民年金だと1級~2級のみが対象となります。
また遺族基礎年金の対象も厚生年金保険の方が広いと言えます。国民年金の場合は配偶者と子のみが対象となっています。
一方で厚生年金の場合は配偶者と子だけでなく、父母・祖父母・孫まで対象となっており、保障内容がより充実しています。
扶養制度により保険料の費用負担を軽減することができる
厚生年金保険にも健康保険と同様に扶養制度が適用されます。派遣会社と契約している派遣看護師が被保険者として、その配偶者が扶養に入っている場合は、派遣看護師は厚生年金第2号被保険者で配偶者は第3号被保険者となり、配偶者には保険料が発生しません。
国民年金では被保険者と扶養家族それぞれに保険料が発生しますので、世帯での費用負担が大きくなってしまいます。
いざというときに安心!派遣看護師は労災保険にも加入できる?
さらに派遣看護師は労災保険にも加入することができます。
労災保険は業務中や通勤中に事故などで負傷したり、過労によって病気にかかったりした場合に、保険に加入している労働者や家族を支援するための補償制度です。
また保険に加入している本人が死亡してしまった場合も補償が適用されますので、派遣看護師であるならむしろ利用したい制度であると言えますね。
労災保険はどんな業種であっても加入できる
労災保険にはとくに加入条件は設けられていません。こちらの場合は業種に関係なく、あらゆる事業主が加入手続きすることが義務となっています。
つまり雇われている労働者が個人的に手続きをする保険ではなく、人材を雇う側の事業者が加入手続きをする必要があります。
派遣看護師を雇っている派遣会社が加入手続きをしますので、派遣看護師も労災保険の対象者となります。
単発・短期・長期などの派遣期間も関係なく労災保険の対象です。
保険料も派遣会社が全額負担となりますので、派遣看護師が負担する必要は一切ありません。
派遣の仕事をするなら保障制度について知っておこう
派遣看護師は正規雇用の職員とは違って、自己判断による契約で仕事をするため、保険の知識もある程度必要になります。
いざというときに自分で自分の身を守れるよう、最低限、社会保険などの保障制度についてはある程度知識を身に着けておくと良いでしょう。